「プロサッカー選手になりたい!」
そんな夢を持つお子さんを支えるサッカーママ・パパにとって、日々のサポートには多くの悩みがつきものです。
将来を見据えた育成のあり方、学業との両立、そして子どもの成長にどう関わるべきか——。今回は、Youtube『なぜスペインの選手は「サッカーが上手い」のか。 | スペイン育成現場の真髄 Vol.5(小澤一郎×FERGUS)』の対談から、スペインの育成現場を通じて、日本の保護者が学べるヒントを探っていきます。
スペインの育成が生む「サッカーがうまい子」
スペインは長年にわたり、世界トップレベルのサッカー選手を数多く輩出しています。その背景には、独自の育成ピラミッドが存在します。では、日本の育成と何が違うのでしょうか。
クラブ中心の活動が「育成ピラミッド」の土台に
スペインには、日本で一般的な「学校の部活動」が存在しません。サッカーはすべてクラブチームで行われ、4歳や5歳から地域のクラブに所属し、体系的なトレーニングを受け始めます。
このクラブ主体の構造が、育成の土台=ピラミッドの底辺を支えており、早期から競技志向の高い環境に身を置くことが当たり前となっています。
年間200試合が育てる実戦力
スペインでは、幼少期からリーグ戦が主軸となり、小学校年代から年間20試合以上をこなします。10年間で200試合以上の公式戦を経験することで、選手は実戦でしか得られない「判断力」や「対応力」を自然と身につけていきます。
試合では、1点差・2点差を争うハイレベルな戦いが連続し、指導者の指示を待たずに自ら判断する力が求められます。これはまさに「自ら考える力」を育てる実践の場。こうした育成環境が、スペインの子どもたちを“サッカーがうまい”と感じさせる所以です。
プロになるかどうか、早期にわかる現実
スペインでは、ピラミッドの中で自分がどこに位置しているのかを、子どもたち自身が非常に早い段階で理解します。
たとえば、中学年代(カデテ)までにプロクラブのアカデミーに所属していなければ、プロ選手になる可能性は限りなく低いとされます。これは時に「残酷」とも言われますが、現実と早く向き合う文化が根づいています。
結果として、スペインのサッカーママ・パパは、我が子が「楽しみでサッカーをするタイプ」なのか、「競技志向で上を目指すタイプ」なのかを明確に見極め、適切なサポートへと舵を切ります。
「学業とサッカー」は別軸で支える文化
サッカーに全力を注ぐスペインですが、意外にも学業との両立にはとてもシビアです。
プロクラブが「学びの場」に
たとえば、レアル・ソシエダの育成アカデミーでは、クラブハウスに学習室を併設し、家庭教師を招いての学習サポートが行われています。練習の前後に自習時間を確保し、学校での成績にも目を光らせるという徹底ぶりです。
こうした取り組みにより、ソシエダのアカデミー選手の大学進学率は約7割にものぼります。スペイン全体の大学進学率が約4割であることを踏まえると、非常に高い数字です。つまり、プロクラブが「進学塾」として機能しているとも言えるでしょう。
引退後のキャリアを見据える育成
スペインの育成は、サッカー選手としてのキャリアだけではなく、**引退後の人生も含めた“人としての育成”**を大切にしています。プロになっても一生安泰とは限らないからこそ、学業という「別軸」での支えが不可欠なのです。
サッカーママ・パパとしても、お子さんがどの進路を選ぶにしても通用するよう、学びの環境を整える重要性は非常に高いでしょう。
日本の育成との違いをどう活かすか
スペインの育成現場から得られる知見は、日本で子育てをしているサッカーママ・パパにも多くの気づきを与えてくれます。
「プロ」だけがゴールではない
プロを目指すことは素晴らしい夢ですが、それだけに固執することが子どもの可能性を狭めてしまうことも。スペインでは、子ども自身が現実と向き合いながら、「自分に合った環境でサッカーを楽しむ」という選択肢も自然に受け入れられています。
これは、日本でも見習うべき文化です。夢を応援しつつも、お子さん自身の特性や希望に寄り添った柔軟な選択を支えるのが、サッカーママ・パパの大切な役割と言えるでしょう。
自分で考える子に育てよう
スペインの育成の核には「自ら判断し、行動する力」があります。これは、単に試合数が多いから育つのではなく、「拮抗した実戦環境」の中でしか得られない力です。
日本では、そこまで試合環境が整っていない地域もあるかもしれませんが、日々の練習で“自分で考える力”を育てる工夫はできます。監督の指示を待つだけでなく、「今、自分がすべきことは何か?」を考えさせる問いかけや声かけを大切にしていきましょう。
学業との両立を軽視しない
サッカーで成功するには学業も必要だという視点は、スペインの育成現場から明確に示されています。むしろ、学業が整っているからこそ、サッカーにも集中できるという考え方すらあります。
保護者としては、「サッカーがうまくなるためのサポート」だけでなく、「学ぶ力を育てるサポート」も同じくらい大切にしてあげてください。
まとめ|サッカーママ・パパが知っておきたい育成の視点
スペインのサッカー育成は、クラブ主導の明確なピラミッド構造、豊富な実戦経験、学業との両立など、さまざまな要素が有機的に結びついています。その結果として、技術だけでなく人間的にも成熟した選手が育っていくのです。
日本でも、すべてを真似することは難しいかもしれませんが、「子どもの成長に必要な視点」を広げることはできます。
- サッカーと学業は両輪であること
- 自分で判断する力を育むこと
- プロを目指すだけでなく、多様な価値観を認めること
これらの視点を持つことで、サッカーママ・パパとして、お子さんの未来により深く関わることができるでしょう。
サッカーの技術はいつか衰えます。しかし、考える力や学ぶ力は、一生の武器になります。スペインの育成現場の学びを、日本のご家庭でも生かしていきましょう。
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