今回は、Youtube「「サッカーはリアリティのあるコミュニケーション」| スペイン育成現場の真髄 Vol.4 | Guest 末本亮太(大豆戸FC)[小澤一郎×FERGUS]から、私たち日本のサッカー環境にどんなヒントが得られるのかを、サッカーママ・パパ目線でご紹介します。
世界屈指のサッカー大国・スペイン。その育成の現場には、子どもたちの心と身体の両面を育むための大切なエッセンスが詰まっています。
お子さんのサッカー生活をより豊かに、より楽しくするために、ぜひ最後までお読みください。
フェアプレーは形式じゃない――本物のコミュニケーションが育つ空間
スペインの育成現場を見てまず印象的なのは、「フェアプレー」に対する考え方の違いです。日本ではフェアプレーという言葉が形式的に使われがちですが、スペインではその本質が日常の中に根付いています。
試合中にファウルが起きても、選手たちは互いに自然と笑顔でハイタッチを交わし、「いいゲームだった」と感謝の気持ちを表現します。それは、勝ち負けを超えた一人の人間同士のやりとりとしてのサッカーが、少年少女たちの中に息づいている証です。
日本ではファウルを受けるとつい感情的になってしまいがちですが、スペインでは「サッカーは現実的なコミュニケーション手段である」という理解が共有されています。試合前後のあいさつやコーチ・審判との触れ合いからも、そうした文化の深さが伝わってきます。
子どもらしさを奪わない指導――信頼の中で伸びるスペインの少年少女
スペインの少年少女たちは、日本の同年代の子どもたちと比べると、より「子どもらしさ」が残っているように感じられます。ロッカールームでのふるまいも無邪気でありながら、必要なときにはコーチとしっかり向き合ってコミュニケーションが取れる力を持っています。
そこには、「大人の言うことを無条件に聞きなさい」といった上下関係ではなく、指導者と子どもが人と人として接する土壌があります。命令や叱責ではなく、対話と信頼の積み重ねの中で、子どもたちは自発的に学び、育っていきます。
こうした環境が、サッカーだけでなく社会性や自己表現力を育む基盤になっているのです。
自然と身につくキック力――環境がプレーを変える
日本のサッカー育成では、「ボールを遠くに蹴れない」「強く蹴るのが苦手」といった悩みがサッカーママ・パパからよく聞かれます。一方、スペインの少年少女たちは、特別なキック練習をしているわけでもないのに、驚くほど強いボールを蹴る力を持っています。
その理由のひとつが、練習環境の違いです。スペインでは日常的に広いピッチでのゲーム形式の練習が行われており、広大なスペースを活かしてプレーする必要性が自然と生まれます。結果として、「遠くに蹴る」「ゴールを意識する」といったプレーが日々の中で培われていくのです。
加えて、前線に選手が張り付くスペイン独特のフォーメーションでは、中盤に生まれるスペースを利用したダイナミックな展開が当たり前のように見られます。このような自由度の高いプレー経験こそが、実戦で生きる力を育てているのです。
サッカーの本質を育む「環境整備」の大切さ
スペインの育成から学ぶ最大のポイントは、何よりも「環境づくりの重要性」にあります。
まず、試合時間。日本の少年サッカーでは、試合時間が非常に短く、小学生でも10~20分ハーフが一般的です。一方スペインでは、小学1・2年生でも40~50分の試合が普通に行われています。長い試合時間の中でこそ、子どもたちは流れの変化を体験し、逆転劇を味わい、サッカーの面白さを深く理解していきます。
また、年齢や成長段階に応じたピッチサイズやゴールの大きさを調整することも、スペインでは当たり前のように行われています。発達に見合った環境でプレーすることで、子どもたちの成長を無理なく、かつ効果的にサポートできるのです。
さらに注目すべきは、「練習量よりも試合の質」を重視する姿勢です。スペインでは週末に1試合だけというチームも多くありますが、その分、1試合ごとの価値を大切にしています。全員が出場し、プレーする時間がしっかり確保されているからこそ、子どもたちは試合から多くを学び、成長できるのです。
「サッカーって楽しい!」と感じられる環境を
日本の育成現場では、ともすれば「練習量」や「技術習得」に意識が偏りがちです。しかし、スペインのように「サッカーの本質」、すなわち「試合を通じた学び」や「人とのつながり」を大切にする視点こそ、今の私たちに最も必要なのではないでしょうか。
子どもたちがさまざまな状況を自分の頭で考え、仲間と協力しながら乗り越えていく。そうした経験の積み重ねが、心の成長にもつながっていきます。
「サッカーって楽しい!」。その気持ちを、少年少女たちがずっと持ち続けられるように。サッカーママ・パパとして、私たちも育成現場の在り方に関心を持ち、より良い環境づくりをクラブや指導者とともに考えていけたら、子どもたちの未来はさらに明るくなるはずです。
これからも、サッカーを通じてお子さんの成長を一緒に応援していきましょう。
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