「もっと練習してほしいのに…」
「試合で活躍してくれたら嬉しいのに…」
サッカーに夢中なわが子を応援するサッカーママ・パパであれば、そんな思いを抱えたことが一度や二度ではないはずです。
「口を出しすぎたかな…」「もっと見守るべきだったかな…」と、自問自答してしまうこともあるでしょう。
今回は、そんな「サッカーママ」「サッカーパパ」の皆さんにこそ知っていただきたい心理学の智慧——アドラー心理学の中心概念である「課題の分離」について紹介します。
今回の参考書籍:嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え(著 岸見 一郎、古賀 史健)
「課題の分離」って何? アドラー心理学に学ぶ子育てのヒント
アドラー心理学は「嫌われる勇気」というベストセラーでも知られ、自己肯定感や対人関係の改善に役立つ心理学として、幅広い世代に支持されています。その中でも特に重要とされているのが「課題の分離」という考え方です。
これは「自分と他人の課題を明確に分け、他人の課題には踏み込まない。逆に、自分の課題に他人を介入させない」という姿勢のこと。
言い換えれば、責任の所在をはっきりさせるということです。
では、どうやって「誰の課題なのか」を見極めるのでしょうか?
アドラーはこう提案しています。
「その選択の結果を、最終的に引き受けるのは誰か?」
たとえば、勉強をするかどうかは子ども自身の課題。成績が下がって困るのも、受験に失敗するのも子どもです。親がどれだけ手を尽くしても、最終的に結果を受け止めるのは子ども本人。だから、勉強は「子どもの課題」なのです。
サッカーに置き換えるとどうなる?
この「課題の分離」を、少年少女のサッカーに当てはめてみましょう。
- 練習に本気で取り組むかどうか
- 試合で力を発揮できるかどうか
- チームメイトと良い関係を築けるかどうか
- サッカーを続けるか、別の道を選ぶか
これらはすべて「子どもの課題」です。練習をさぼれば、その代償を引き受けるのは子ども自身。試合で結果を出せなければ、悔しさや成長の糧を得るのもまた子どもです。
ところが私たち親は、無意識にこの課題に踏み込んでしまいがちです。
サッカーママ・パパが「土足で踏み込んで」しまう瞬間
「もっとこうしてほしい」「こんな風に動けば良かったのに」
こうした思いが積もると、試合中に大声で指示を飛ばしたり、練習後にダメ出しをしたりしてしまうことがあります。
- 「なんで走らないの!?」
- 「今のはチャンスだったでしょ?」
- 「もっと目立たなきゃ!」
それは果たして、子どものための言葉でしょうか?
アドラー心理学では、親が「あなたのため」と言いながらも、実際には自分の評価や見栄のために子どもをコントロールしようとしていることがあると指摘しています。
そして子どもは、こうした親の「真意」を敏感に察知します。「本当に自分のことを思ってくれてるの?」と疑問を感じたとき、心の距離が生まれます。
「自分の人生」を生きるために
アドラー心理学では、人が本当の意味で幸せになるには、「他人の期待に応えるための人生」から脱却することが必要だとされています。
親に認められたい、褒められたい——。
子どもがその思いを強く持ちすぎると、やがて自分のやりたいことが分からなくなってしまいます。反対に、親も「子どもに良い結果を出してもらわないと、自分が認められない」と思い込んでしまうと、子どもの人生を利用するような形になってしまいます。
つまり、**課題の分離は、子どもと親の双方にとって「自分の人生を取り戻すための鍵」**なのです。
サッカーママ・パパができる、本当に大切なこと
「じゃあ、何もしない方がいいの?」
そんな風に思う方もいるかもしれません。
しかし、「課題の分離」とは、子どもを放任することではありません。
むしろ、親ができる最も大切なことは、子どもを信じて見守ることです。
そして、必要なときには「いつでも手を貸す準備ができているよ」と伝えること。この姿勢こそが、子どもにとっての安心感になり、結果として自立心を育ててくれます。
「サッカーやめたいって言い出したらどうしよう」
「もっと上手くなってほしいのに…」
そんな不安を感じたときこそ、親自身の「課題」と子どもの「課題」を分けて考えることが重要です。親が向き合うべきは、自分の感情や期待。そして子どもが向き合うべきは、サッカーへの想いと行動です。
「冷たい親」になるわけじゃない
「課題の分離」と聞くと、「突き放してるようで冷たい」と思うかもしれません。でもそれは誤解です。
この考え方の本質は「自分も相手も尊重する」ことにあります。
お互いに「あなたの人生はあなたのもの」「私の人生は私のもの」と認め合うこと。それこそが、真に温かく健全な関係性なのです。
子どもの自立を応援するために、親ができる最大のサポート。それは、「信頼」と「見守り」です。
まとめ:子どもの成長と親の自由を育てる「課題の分離」
子どものサッカーを通じて学べることは、技術や勝敗だけではありません。
親子の関係性、自己の在り方、そして「自分と他者の境界線」について考える貴重なきっかけになります。
アドラーはこう語っています。
すべての悩みは、対人関係の悩みである。
そしてその多くは、「課題の分離」ができていないことに原因がある。
だからこそ、サッカーを頑張る少年少女の「課題」を尊重し、彼らの選択と成長を信じて見守る。
その姿勢が、子どもの人生にも、親である私たちの人生にも、自由と豊かさをもたらすのです。
選手とサッカーママ・サッカーパパが共に成長していくその一歩一歩が、アドラー心理学の智慧とともに、よりしなやかで幸せな時間になりますように。
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